私は飲食店やレストランチェーン向けにいろんなサービスを開発していますが、デジタルにするメリットを分からない人がまだまだたくさんいると感じます。
こういった方に、絶対デジタル化する価値があることを理解して欲しいと思っています。
実は、飲食店やレストランチェーンを運営するうえで大きな負担となっているのは「バックオフィスコスト」です。
人事や労務関連の手続きや書類管理などが属人的・手作業のままだと、目に見えにくいコストが積み重なり、経営を圧迫します。
本記事では、バックオフィスコストの内訳と、その効率化やコストカット、人事DX・バックオフィスDXによるメリットを具体的な数値とともに解説します。
1. バックオフィスの代表的なコスト項目
1-1. 人事部門の手作業コスト
- 従業員の退職・入社手続き
退職時や新規入社時に必要な書類手続きは意外と時間を取られます。例えば1名あたりの退職・入社処理に複数時間かかり、それが毎週・毎月積み重なると大きな人件費に。 - 給与計算・勤怠管理
給与計算において手入力やエクセル管理が続くと、担当者は毎週数時間の作業に追われます。また勤怠データのチェックも同様で、店舗数が増えるほど作業量は増加します。 - 福利厚生・社会保険関連の管理
書類の不備や手続きの遅れがあると、企業が罰則や追加負担を求められるケースも。正確な処理を行うには専門知識が必要で、人件費もかさみがちです。
1-2. 店舗管理者の負荷
- シフト作成と調整
飲食店ではシフト調整が日常的な業務です。スタッフの希望休や急な欠勤対応など、店舗管理者は毎週多くの時間をシフト組みに割くことになります。 - 新人研修・書類準備
新規アルバイトが頻繁に入れ替わる業態では、契約書や研修資料の準備に店舗責任者が時間を費やします。テンプレートがあっても、紙書類で管理している場合は更新や保管が煩雑に。
1-3. 物理的な保管や備品費用
- 書類の保管スペース
雇用契約書、健康診断証明、食品衛生に関わる書類など、保存義務がある資料は膨大です。オフィスや店舗の限られたスペースに書類棚を確保しなければならず、保管コストが発生します。 - 備品・文房具の消耗
雇用契約書の印刷、タイムカードの補充、紙ベースでの集計など、思わぬところで消耗品のコストが発生します。
1-4. 書類検索・情報共有の時間コスト
- 書類の捜索時間
「あの社員の健康診断書はどこ?」「過去の給与明細は?」といった情報を探すのに、担当者や店舗管理者が週に数時間を費やすケースも。システム化されていない場合、探すコストが大きくなります。 - 情報の二重管理・更新ミス
同じデータを店舗と本部で別々のエクセルに入力していると、更新がずれてミスが起きるリスクも高まります。その確認作業にも時間がかかります。
2. 数値で見る:店舗10拠点の場合のコストシミュレーション
ここでは、10店舗を運営する飲食チェーンを想定して、年間にかかるバックオフィスコストを試算した事例をご紹介します。金額は概算ですが、多くの飲食企業が抱える課題をイメージできます。
2-1. 人事部門の時間コスト(時給2,500円換算)
- 退職・入社関連書類:週20時間(約50,000円)
- 給与計算:週15時間(約37,500円)
- 勤怠状況のチェック:週10時間(約25,000円)
- 福利厚生の手続き:週8時間(約20,000円)
年間合計:約690万円
2-2. 店舗管理者の時間コスト(時給3,000円換算)
- シフト管理:1店舗あたり週6時間(計10店舗で18,000円×10)
- 新規アルバイト書類作成:1店舗あたり週4時間(12,000円×10)
- タイムシート確認:1店舗あたり週3時間(9,000円×10)
- 研修資料の管理:1店舗あたり週2時間(6,000円×10)
年間合計:約2,340万円
2-3. 保管・備品費用
- 物理的な書類保管:1店舗あたり月11,000円
- 食品衛生関連の証明書管理:1店舗あたり月5,500円
- 従業員資格関連ファイル:1店舗あたり月2,750円
- 事務用品:1店舗あたり月11,000円
年間合計:約363万円
2-4. 書類検索・情報検索コスト(時給2,800円換算)
- スタッフ資格証明書の捜索:1店舗あたり週3時間(8,400円×10)
- 保健所からの検査時の書類確認:週2時間(5,600円×10)
- 従業員ファイルの更新と閲覧:週2時間(5,600円×10)
- 給与記録の検索:週2時間(5,600円×10)
年間合計:約1,310万円これらを合計すると、年間で約4,700万円にものぼります。
3. 追加で発生する日本特有のコスト
飲食業界には特に日本独自の法規制や慣習があります。10店舗規模を例に、さらに追加で発生しがちなコストを見てみましょう。
3-1. 健康診断・定期検診の管理
- 担当スタッフの時間コスト(時給2,500円)
- 証明書の処理:1店舗あたり週2時間
- スタッフへのフォローアップ:週1時間
- 記録の更新とファイリング:週1時間
- 直接的な費用
- 健康診断費用:1名あたり5,000円×(1店舗20名)×10店舗
- 書類保管・コピー:月3,000円×10店舗
年間合計:約624万円
3-2. アルバイト(学生バイト)の管理
- 店舗管理者の時間コスト(時給3,000円)
- 試験期間中のシフト調整:1店舗あたり週3時間
- 勤務可能時間の確認・追跡:週2時間
- 契約更新の手続き:週1時間
- 契約処理費用
- 新人アルバイトの契約処理:1名あたり2,000円×年間30名×10店舗
年間合計:約1,014万円
3-3. 正社員(社会保険)関連手続き
- 人事部門の時間コスト(時給2,500円)
- 月次の保険料計算:1店舗あたり月4時間
- 書類提出や更新:月2時間
- 従業員からの問い合わせ対応:月2時間
- システム・専門家への費用
- ソフトウェアメンテナンス:月5,000円×10店舗
- 社会保険労務士などへの相談料:月1万円×10店舗
年間合計:約480万円
3-4. 食品衛生資格の管理
- スタッフの時間コスト(時給2,500円)
- 有資格者のリスト管理・更新:1店舗あたり週2時間
- 資格更新の手続き:週1時間
- 直接的な費用
- 資格研修テキスト:月2,000円×10店舗
- 資格試験料:年1万円×1店舗15名×10店舗
年間合計:約594万円
3-5. 労働法遵守のための勤怠チェック
- 店舗管理者の時間コスト(時給3,000円)
- 残業時間のモニタリング:1店舗あたり週3時間
- 休憩時間の確認:週2時間
- 月次報告書の作成:月4時間
- システムや備品のコスト
- タイムカードや勤怠管理の備品:月3,000円×10店舗
- コンプライアンス確認用ソフトウェア:月5,000円×10店舗
年間合計:約996万円
こうした追加コストを合計すると、10店舗規模で、年間で約3,700万円。前述の約4,700万円と合わせると、合計約8,400万円のコストがかかっている試算になります。(1店舗あたり年間約840万円が、アナログな人事業務やバックオフィス関連業務でかかっている計算です)
4. バックオフィスDXで実現するコストカットと効率化
4-1. 人事システム導入のROI(投資対効果)
たとえ人事DX・バックオフィスDXを実現するためにソフトウェアに投資が必要でも、手作業が削減されることで次のような効果が期待できます。
- 処理時間の最大80%削減
- 書類のペーパーレス化で90%以上の用紙代削減
- 人的ミスの減少による修正コストの低減
- データ管理の一元化で検索時間を大幅短縮
なので、システム導入コストがかかったとしても、1~2年で費用を回収できるケースがほとんどです。
4-2. 具体例:WelcomeHRなどのクラウド人事システム
当社が提供するWelcomeHRの導入事例では、以下のような成果が報告されています。
- スタッフ最適化
バックオフィスの事務負荷が減り、人事担当者の一部を店舗の売上向上施策や採用強化といった戦略的な業務に回せるようになった企業もあります。 - 大規模展開の可能性
ある企業では、3,000名から6,000名へと従業員数が倍増したにもかかわらず、人事部門の増員なしで運営が可能になりました。
このようにバックオフィスDXを進めると、現場の作業効率だけでなく企業の成長戦略にも貢献できる点がポイントです。
真のコストである時給以外の経費を見逃さない
時給2,500円~3,000円で人件費を計算すると、「それほど大きくない」と思われるかもしれません。しかし実際には、社会保険料や通勤手当、福利厚生費、事務所スペースなどの「付帯コスト」が加わっているため、実質的な負担はさらに高くなります。
この「真のコスト」を把握することで、人事DX・バックオフィスDXへの投資価値をより明確に理解できるはずです。
まとめ:未来志向のバックオフィス運営が鍵
アナログなバックオフィス運営は、気づかないうちにコストを膨らませるだけでなく、情報伝達ミスやコンプライアンスリスクを高める原因にもなります。飲食業界では、法改正への対応やスタッフ入れ替えの多さから、今後も手間が増え続ける可能性が高いといえます。
一方、クラウド型の人事システムやバックオフィス管理ツールを導入すれば、多くの場合1~2年で投資を回収し、その後はずっとコストカットと効率化の恩恵を受けられます。また、現場運営にかけるリソースを増やすことで、店舗オペレーションや顧客満足度の向上にも力を注げるようになるでしょう。バックオフィスコストを削減し、コストカットや効率化を目指すためにも、人事DXやバックオフィスDXへのシフトは早いほど大きなメリットがあります。 競合が導入を進める前に、自社のバックオフィス体制を見直し、長期的な成長戦略を支える下地づくりを行ってはいかがでしょうか。