外資系で営業役員を務め(セールスフォース、Tableau、オラクルなど)、現在はアットラスト株式会社代表の遠藤さんが、リーダーシップ、採用、KPIマネジメント、そしてAI時代の営業について語った内容をわかりやすく整理します。
本稿では、「強さ」から「愛される」への転換、Whyの言語化、内発的動機での採用、データの正しい使い方、AI時代に必要な人間的強みを深掘りします。
遠藤 公護
2001年サンマイクロ入社、オラクルで金融営業部長(社長賞)。2014年Tableau Japan、17年エンタープライズ第一営業本部長(アジア最優秀マネージャー2年連続)を経て、19年Tableau執行役員。2023年AT LAST.Inc(アットラスト株式会社)設立、代表取締役CEO
2-1. リーダーシップ:強いから“愛される”へ
若い頃は「強いリーダー=数字を作る」と考えていましたが、チームが疲弊してしまいました。そこからの学びは、下から支えるサーバント型だけでなく、進む方向を示す「北極星」を同時に示すことの重要性です。上意下達の“伝達屋”にならず、社のミッションを自分の言葉に置き換えて語ることができる、さらに、チーム独自の約束(コアバリュー)は三つに絞り、毎年見直すことができるリーダーが、本質的に「強いリーダー」と言えます。
2-2. ストーリーテリングとWhyの言語化
チームメンバーは機能やHowでは動きません。まず「なぜやるのか(Why)」を語りましょう。Appleの「1500曲をポケットに」のように、夢のある言葉に落としてください。提案は、現状理解の共有から始めて共感を生み、「わかってくれている」と感じてもらいやすくなります。
2-3. 採用と人材育成:内発的動機で選ぶ
リーダーは内部昇格が望ましいです。外部採用は前職の成功体験に寄りがちで、管理だけに傾くリスクがあります。製品と会社を愛し、自分の言葉で方向性を語れる人を据えるべきでしょう。採用では「この会社で何を得たいか」「どう成長したいか」を深掘りし、求める力を三つに定めて、過去の具体的なエピソードで語ることができる状態が望ましいです。
2-4. KPIマネジメント:数字でしばらず、現場を助ける
数字は“管理のムチ”ではなく、現場にメリットを返すために使いましょう。本質的な原因(リソース不足か、スキルか)を見立て、サポートにつなげましょう。トラッキングがなければ真因に届きません。まずマネージャー自身がデータを使いこなすことが前提で、使い方次第で「データハラスメント」にもなり得る点に注意です。
2-5. AI時代の営業:信頼を生む“自分の言葉”
AIは最適な提案を示せるが、「AIが言うから」は買う理由になりません。提案を自分の言葉で噛み砕き、対話で信頼を築く力が必要です。完璧なDMより、結局は「人間らしさ」が伝わる語りと即応のインプット/アウトプット力が大事です。AIが進化するほど、「人を得にする」「人に愛される」価値が際立ちます。
3. チェックリスト(今日から実装)
[ ] 北極星を併記して、方向性をはっきりさせる
[ ] 会社のミッションを自分の言葉に置き換えて語る
[ ] チームのコアバリューを三つに絞り、年1回レビューする
[ ] 管理職は原則内部昇格を第一候補にする
[ ] 採用は内発的動機を重視し、三つの要件×具体エピソードで確認
[ ] KPIは現場のメリットから設計し、数字の裏の原因に介入する
[ ] マネージャー自身がデータを率先利用し、使い方を示す
[ ] AIの示唆を“自分の言葉”で語り、対話で信頼を積み上げる
4. まとめ
強さだけでは続きません。方向を示し、支え、Whyを語り、内発的動機で人を集め、数字は現場のために使い、AI時代でも“自分の言葉”で信頼を築く。これが、離職を防ぎ、成果を安定させる最短距離となるでしょう。
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