社内ベンチャーを立ち上げたが成果が出ない。人材が定着せず離職が続く。自分のキャリアもこのままで良いのか不安──そんな課題感を持つ方へ。
「Top Management Podcast by Dore」に登場したキングソフト ビジネスデベロップメント室 室長・大畠氏は、子会社の取締役・社長を経て親会社の新規事業責任者となった経験から、成功の要を語っていただきました。
本稿では、「やりきる」戦略、現場のモチベーションを引き上げる実装、キャリアを拓く誠実さと意見表明の重要性を深ぼっていきます。
1. ゲスト紹介
大畠 茂信(おおはた しげのぶ)
1977年横浜市出身。早稲田大学政治経済学部卒。株式会社もしもしホットライン(現りらいあコミュニケーションズ株式会社)にて法人営業に従事した後、2012年キングソフト入社。2016年同社執行役員就任。2017年4月子会社ワウテックの取締役に就任。2021年キングソフト株式会社、非常勤取締役就任。

2. 本論セクション
2-1. 失敗を招く思考:「なんとなく」では成長しない
「棚からぼたもち」を待つような姿勢では勝てません。本気度の欠如は必ず顧客に伝わり、売上にも跳ね返ります。短期の成否に一喜一憂するのではなく、中期の勝ち筋に資源を集中し、「やりきる」覚悟で営業やマーケティングを全力投下することが前提です。撤退基準は冷静に設けつつも、そこに至るまでは迷いなく走り切る -この一貫性が成長を生みます。
2-2. 成功の鍵:コミットメント最大化と「象徴受注」
組織のコミットメントを最大化するには、いわば排水の陣を敷く覚悟が要ります。初期の売上が小さく、たとえ開始3か月で1万円という水準でも、折れずに売り続ける姿勢が信頼を積み重ねていきました。親会社が個人向け中心であれば、子会社化して集中できる場を用意するのが有効です。そのうえで上場企業級の大型案件を自力で獲得する経験が転機になります。「自分たちのやり方で売れる」という確信が社内に広がり、代理店展開など次の成長エンジンが回り始めるのです。
2-3. チーム設計:自己資金で生む「当事者意識」
当事者意識を劇的に高めるのは、自己資金の投入です。立ち上げは8名程度の少人数で、半年での黒字化を明確に掲げ、会社出資に加えて社員が多数を自己出資することで「やり切る」前提を組み込みます。運営は徹底して軽量にし、ムダなキャッシュアウトを削り、雇用を安易に膨らませません。親会社の機能は外部委託的に賢く借りながら、スリムな体制で回すことで、経営感覚と学習がチームに定着します。
2-4. 人選:熱量×誠実×意見表明
役職志向よりも、誠実に仕事をやり切り、正しいと思うことを臆せず言語化する人材が評価されます。意思とこだわりを日々の行動で示さなければ、熱量は周囲に伝わりません。短期の数値達成は重要ですが、中期視点で正攻法を積み重ねる姿勢こそが信用を育てます。何より顧客や部下に対する不誠実は長期的に自分へ返ってくるため、「何が正しいか」を曲げない基準がキャリアの土台になります。
2-5. 現場ドリブン:非デスク層に届くプロダクト設計
現場の非デスクワーカーは会社メールを持たず、私用SNSに流れがちな実情があります。だからこそ、直感的で迷わないUIと、企業としての情報統制を両立させた設計が不可欠です。情報システム部門の運用負荷を下げる“誰でも使える”体験を追求しつつ、運用面では「あなたがいて良かった」といった承認を言葉で伝え、1on1を標準化して心理的安全性を担保します。プロダクトとマネジメントを一体で設計することで定着率は上がります。
2-6. 文化と制度:越境接点とマネージャーの承認行動
ロイヤリティを高めるには、部署や属性を横断する越境接点を意図的に設けます。家族同伴可の全社BBQや、月2回のシャッフルランチのような仕掛けが、日常では交わらない関係をつなぎます。マネージャーは「変ではない意味のプライベート」たとえば家族構成など を覚え、自然な会話に活かすことで、部下は自分が認知・承認されていると感じます。上司は社員にとって会社そのものです。導き、支え、存在を認める姿勢が文化となり、次世代に受け継がれていきます。
2-7. 外部環境×戦略:AI・資金・協業のリアリティ
AIはインターネット級の基盤的変化であり、もはやビジネスから切り離せません。一方で日本では大型の先行投資が難しく、メガベンチャーが生まれにくい資本制約があります。だからこそ、法人向けクラウドやビジネスコミュニケーションとのシナジーを起点に、国内の優れた技術との協業と、まだ日本に浸透していない海外SaaSの導入を両にらみで進めます。「すべての働く人に彩りを」というミッションのもと、現場課題をテクノロジーと運用設計で具体的に解きにいく -それが戦略の中核です。
3. チェックリスト(今日から実装)
・「なんとなく」を排し、中期前提の事業計画と資源配分を明確化
・少数精鋭(3〜8名)×自己資金でコミットメントを設計
・上場企業級の「象徴受注」を狙うアカウントプランを作成
・直感UIかつ統制可能な情報共有基盤(現場アルバイトも使える)
・承認の言語化と1on1の標準化(離職抑止の運用設計)
・AI対応と資金戦略の整合、提携先・導入候補のロングリスト化
4. まとめ
社内ベンチャーの勝ち筋は、徹底コミット×現場ドリブン文化。
少数精鋭+自己資金の当事者化/象徴受注の獲得/現場に届く設計を次四半期計画へ落とし込み、事業と組織の同時成長を狙おう。
フルエピソード:Top Management Podcast by Dore「売上爆増!成功する社内ベンチャーの共通点とは」
https://www.youtube.com/watch?v=eta0ciNxTsE&t=516s